DJテントン オフィシャルサイト
♪ 小さな冒険者に グッドラック!
リュックサックを背負った子供が 一生懸命選んだ末 お土産を買った
白いビニール袋に無造作に入れられたお土産を
カレは夜店の金魚を持つように 前へ突き出し 大事そうにゆっくりと ほど近いベンチへ急いだ
ベンチにはスーツ姿の カレの父がいて
一部始終をずっと見守っていた
カレはベンチに戻ると
父の目の前に 今買った土産を自慢げに差し出し
隣に ちょこんと座った
小学校の低学年だろうか?
リュックサックを背負っているが行儀の良い姿と
アタッシュケースを持ったカレの父の
二人の違和感のある感じが妙に印象に残った
あまり会話はなかった
でも 仲むつまじい光景が 普通に繰り広げられていた
やがて 新幹線が入り 乗車が始まった
二人は手を繋ぎ 新幹線に向かった
ドアーの前で手が離れ リュックの男の子だけが 乗り込んで行った
中ほどの席の窓側に座ると 車外にいる父を一瞬探し 微笑んだ
父は入口からずっと カレと平行して移動しており
カレを見失ってはいなかった
発車のアナウンスが響き
新幹線は 静かに走り始めた
子供は 笑いながら 一生懸命手を振っていた
父は 親指を立て グッドラックのサインを出した
新幹線の最後尾が通過した瞬間
父は2~3歩 新幹線を追いかけた
父は もう見えなくなった新幹線の軌跡を しばらく見つめていたが
うつむき 軽く頭を振ると アタッシュケースを持ち直し
さっそうと歩き始めた
カレがボクの前を通り過ぎた時
カレの目は まだ赤く濡れていた ・・・
ボクが そんな光景をぼんやりと眺めて やるせなくなっていた時
スマホが メールを受信した
「 祝 登頂 」 と書かれた件名のメールを開けると
懐かしいアルバイトリーダーのフックンが
富士山のテッペンでVサインをして笑っていた
「 8月2日 5時32分、無事に富士山登頂に成功しました! 」
ボクは苦笑いをすると 富士山の方向に向かって親指を立てた
「 フックンお誕生日おめでとう 」